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ツバキ・リンドウ
称号 紅赤に彩る恋花
所属 不明
異界 和ノ国
発言 「たまにはこういう日もいいものね」
「はい、これ、ツバキにプレゼントだよ」
異邦の友人エトワールは、そう言って綺麗な小箱を私に差し出しました。
「ありがとう! たしか……『ばれんたいん』っていうんだっけ?」
「そうそう。大切な人に『チョコレート』を贈る日さ」
『ばれんたいん』に『ちょこれいと』……。
異国の言葉には、いつも独特な響きがあって、その不思議な風情に、私はいつも興味をそそられます。
「よかったらツバキも、誰かにチョコを贈ってみたらどうかな?」
「そうね……私もやってみようかな!」
誰かに贈る――そう言われて私の脳裏に浮かんだのは、喧嘩っ早い、めんどくさがり屋の顔でした。

私は、エトワールから教えてもらって作った『ちょこれいと』の箱を手に、あの子――ハヅキの姿を探します。
……あ、いました。
「お、ツバキじゃねーか。なんだ、アタシと果し合いでもしに来たのか?」
開口一番、物騒なことを言って不敵な笑みを浮かべるハヅキ。
「それはまたの機会にでも。今日はあなたに……」
私は、丁寧に梱包した箱をハヅキに見せました。
「なんだこれ? ……アタシにくれるってのか?」
「はい。今日は『ばれんたいん』といって、友達に『ちょこれいと』をあげる日なんですよ」
私の言葉に、ハヅキはきょとんとした様子で、
「ばれ……? ちょこれ……? はあ……お前って、ほんとハイカラなモンが好きだよな」
「まあ、そう言わずに。とても美味しいですよ」
「んじゃ遠慮なくもらうぜ。ちょうど小腹が空いてたとこだしな!」
ハヅキは、私の手から『ちょこれいと』の箱を奪い取ると、乱暴に包装を破り、中の『ちょこれいと』を鷲掴みにします。
「あ、こら! そんなに一気に食べたらもったいないじゃない!」
「うっさいなー、どう食おうとアタシの勝手だろ?」
そう言ってハヅキは、鷲掴みにした『ちょこれいと』を、まるでおにぎりを食べるかのように、一気にパクパクと食べ始めてしまいました。
「おお、案外うまいじゃねえか! ちょっと甘すぎる気もするが、これはこれで……うぐっ!?」
「ハ、ハヅキ!? どうしたの?」
するとハヅキは、みるみる顔が赤くなっていきました。
「な、なんひゃこれ……妙に、酔ってひたぞ……きゅう……」
「ハヅキっ! い、一体どうして……あ!」
そこで私は、エトワールから教わった材料である「洋酒」を、多めに入れたことを思い出しました。
あの洋酒、とても美味しかったからついたくさん入れちゃったけど……さすがに多すぎたかな?
ひとまず私は、酔ったハヅキを膝枕しました。
しばらくして、ようやく酔いが醒めた様子のハヅキは、
「……あ~、ひでえ目にあったぜ」
「う……ごめんなさい……」
私が謝ると、ハヅキはおもむろに口を開いて、
「……なあ、その、ちょこなんとかってやつ……ダチにあげる菓子なんだって?」
「ええ、そうですよ。エトワールからそう教わりました」
「ふ~ん……そっか」
それだけ答えると、ハヅキは何やら考え事をはじめ、ぽつぽつと言葉を紡ぎます。
「……あいにくアタシは、ちょこなんとかを持ってねえから、お前にやれるものはない」
別にお返しを期待してたわけじゃないけど、そんなはっきり言わなくてもいいじゃないですか……。
「……だから今度、アタシの行きつけの甘味処に連れてってやるよ。それで貸し借りなしな」
それだけ言って、ハヅキは私から顔をそむけました。
「もう、素直にありがとうって言えないんですか?」
「ふん、アタシがそういう柄じゃねえって、お前が一番よくわかってるだろ?」
「……まあ、そうなんですけどね」

『ばれんたいん』……たまにはこういう日もいいものね。
エトワールに感謝しなきゃ!